感謝の思いが詰まった1万円札だった。
フードバンクの事務所に4月中旬、継続支援をしている40代男性がふらりと顔を出した。
寄贈された食品を無償で提供する「フードバンク」活動の支援を受けた困窮者の一人だった。
「お米はある?調味料は?」
いつものように尋ねると男性は首を振り、照れくさそうに財布から1万円札を取り出して、差し出した。
「今日は、食品はあります。寄付したいから来たんです。困っていた時、お世話になったから…。」
新しい就職先が決まったのでその報告をしに来てくれたのだった。
数年前に脳梗塞で半身まひとなり、勤めていた職場を離れざるを得なくなった。次の職探しが上手くいかず、次第に困窮した。2015年の師走、助けを求める電話が入った。それ以来、何度か食料の支援を行った。そして、フードバンクに入庫した食品の伝票書きなどのボランティアでお手伝いしてくれた。同じような境遇の困窮者を、時には励ましてくれた。
誰だって、病気やけがなど不測の事態で一時的に困窮することはある。制度の基準から外れて行政の支援が受けられないケースもごまんとある。でも、助けあいが当たり前の人間関係の中にいればなんとかなる。
「困った時はおたがいさま」
できるときに困っている人を助ける、困った時は人に助けを求める。
この方の行動は大切なことを教えてくれた。ありがとうございます。(さわ)