フードバンクの周辺⑦ ― 片道切符の職探し

写真と文は関係ありません。地方都市のイメージ
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野宿しつつ2週間かけて宇都宮へ
 1月中旬の寒い朝、フードバンク宇都宮に20代の2人の若者が食料を求めて現れた。岩手県花巻から2週間かけて鈍行を乗り継いで昨日たどり着いたという。市町村の役場などではお金がない行路者には隣の街まで行く少額の交通費を貸していて、役場で数百円を借りては、そのお金でパンを買いつつ移動して次の街まで行き、それを繰り返してやってきたのだ。夜は駅や公園で野宿。寒くて眠れなかったという。かなり疲弊した感じだったので、事務所の冷蔵庫にある冷凍ご飯を温め、食べさせてから事情を聞いた。

地元には職もない。親もいない。

 二人は愛媛の地方都市の出身。元気な方の若者は元ファミレスの店長もやっていたという。しっかりした感じの人だ。ファミレスが昨秋に閉店となり、解雇。仕事を探したが地元では職がなく、高校の時の友達が「岩手にいい仕事があるよ」というので、もう一人の相棒とともに花巻に行った。しかし行ってみたら、それはガセネタで、いつまでたっても仕事も紹介してくれず、なんだかんだと言って少ない所持金もだまし取られた。花巻に来る交通費が所持金のほぼ全額だったので、愛媛に帰る金もなくなった。片道切符の職探しだったのだ。しかしここにいても何にもならないからと、とりあえず知り合いのいる東京まで行けば…と。その途上の宇都宮だったのだ。この間、もう一人の相棒は何もしゃべらない。理由を聴くと精神疾患をかかえているとのこと。

 愛媛に戻るつもりはない。実家にはすでに両親もなく、職もないから。とりあえず東京に行く。知り合いがいるので、その人を頼って…と言うが、懇意にしているほどではなさそうだった。

東京で、もしものときにNPOを教える

 「これからどうすんの」と聞くと、また同じ方法で行くというので、それではあと3、4日かかるしそんな疲れ方では体が持たないだろうからと1000円を貸し、食品を持たせて送り出した。東武線でいけば今日中に到着できるし安い。そしてもしも“知り合い”に断られた場合のために、東京にあるホームレス支援系NPOや生活困窮者支援系NPO、若者自立支援のNPOの電話番号等も渡して送り出した。

ブラック企業⇒派遣⇒解雇。東京から歩いてきた若者

 年末には愛知から札幌へ行く途中という派遣切りに遭った若者にも食品援助した。彼は東京から小山まで2日かけて歩いてきた。

 聞けばこの人も「地方には仕事がない」と言っていた。地元ブラック企業⇒派遣⇒解雇という流れであった。 ワーキングプアは人知れず困窮している。しかし住民票がない人には福祉の支援も届かない。“移動する社会”にはつなぎの金と、縁のある人と、かけこむ場が必要なのだと思う。(やの)

 

 

 

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