山さん44歳。出身は大阪。
アパートに両親と3人で暮らしていた。新聞配達のアルバイトや宅配業契約社員等で10年くらい働いていた。その後何らかの理由で仕事に就かず(就けなかったのか)、両親も亡くなった。
何の当ても無くさまよう
収入がなくアパートも出ることになり、大阪から福島県内へ除染の派遣労働をしていた。本人曰く「2週間くらいで仕事がなくなり生活ができなくなった」。
寮も出されホームレス状態となり、交通費貸付を受けながら関東方面に移動してきた。宇都宮にたどり着き、宇都宮市社協へ相談してVネットへつながった。
なんとか方向性は決まる
「今後どうしたらよいのかわからない」というので、考えがまとまるまでVネットに3泊し、最終的に栃木市のNPOが仲介に入って定住を希望したので、生活保護申請をした。栃木市のアパートに住むことが決まった。
とんずらされる
生活用品を買うためにVネット関係者にお金を借りたところで、その立替金を持って翌日いなくなった。あれから2か月以上過ぎたが本人は現れない。まあ持ち逃げしたので現れるはずはないだろうが…
口数の少ない静かな人だった。「そんな風なことをやる人ではない!」と担当者は複雑だ。彼が姿を消した理由は分からないが、推測することはできる。
プライバシーが守られすぎる事の弊害
フードバンク事業が始まりいろんなケースと出会って思うのは、家庭の中に他人が入るチャンスはほとんど無いことだ。公共料金は引き落とされ、回覧板だってそーっと玄関のポストに入れる縁薄い今。少し前は、夫婦喧嘩をしていると突然「ごめんくださ~い」と近所の人がお茶飲みにくる。そんな突然の訪問に「違う風」が吹き喧嘩もそこでストップ。冷静になる。
こんな「違う風」がどこの家庭でも重要だと思う。家の作りもそうだ。立派な門構えで関係者立ち入り禁止と言っているようなものだ。その上、電話してから訪ねるのが常識(誰が決めたの)子供の世界でもそうだ。そんな緊張感の中で生活しているので下手なことも言えない。
面倒くさいけど
ぷらぷらしている親戚の子供に平気で「仕事もしないでなんでぷらぷらしてんだ!」と声をかけるおじちゃん、おばちゃんのおせっかいも姿を消す。ある意味面倒くさい部分をみんなで排除してきた。もうそこには戻れないが、そんな面倒くささも必要だと気付いてしまった。
流れてくる人が定着するかは、その土地や人へのこだわり、愛着があるかどうかだな、ともう一人の担当者が言っていた。(KIKU)